サロン経営において、オーナーやスタイリストがスタッフに対して指導を行う場面は多くあります。しかし、適切な指導を超えて、パワハラ(パワーハラスメント)やモラハラ(モラルハラスメント)とみなされる発言や態度を取ることで、訴えられるリスクが生じます。特に近年、働き方改革やハラスメントに対する意識が高まる中で、慎重な対応が求められます。以下では、サロンオーナーやスタイリストが注意すべき発言や状況をまとめます。

  1. 人格否定や侮辱的な発言

言いがちなフレーズ:

•   「お前は何もできない」
•   「本当に無能だな」
•   「やる気が感じられないなら辞めた方がいい」
•   「この仕事向いてないんじゃない?」

リスク:

人格を否定する発言や、スタッフの能力を侮辱するような言葉は、モラハラとみなされる可能性が非常に高いです。技術力や仕事の姿勢を指摘することは必要なことですが、相手の人間性を否定するような発言は、精神的苦痛を与えるため、訴訟リスクがあります。

  1. 公衆の面前での叱責

言いがちな状況:

•   多くのスタッフや顧客がいる前で、「何度言えばわかるんだ!」などと強い口調で叱る。
•   ミーティング中に、一人のスタッフを名指しして責任を追及する。
•   サロン全体で聞こえる声で「君はまだ役に立っていない」と発言する。

リスク:

公衆の面前での叱責や侮辱的な発言は、パワハラとみなされる可能性があります。特に、美容室ではオープンスペースが多いため、他のスタッフや顧客が聞いている前での叱責は、本人に強い屈辱感を与えることがあります。これは、精神的なストレスを引き起こし、訴えられる原因となり得ます。

  1. 過度な勤務時間や業務の強制

言いがちなフレーズ:

•   「夜まで練習するのが普通だろ」
•   「休むな、もっと働け」
•   「自分のためだと思ってやれよ、サロンのためなんだから」
•   「休日返上でイベントに参加してもらうから」

リスク:

美容師業界では、営業時間外の練習や休日のイベント参加が一般的なこともありますが、これを強制することはパワハラとみなされるリスクがあります。労働時間外に無理に仕事をさせることや、休息を取らせないことは、従業員の健康や権利を侵害し、法的な問題となる可能性が高いです。

  1. 個人的な生活に関する過度な干渉

言いがちなフレーズ:

•   「こんなプライベートの過ごし方してるから仕事がうまくいかないんだ」
•   「恋人と別れた方がいいよ、そのせいで仕事に集中できないんだろ」
•   「結婚したら辞めるつもりか?」
•   「妊娠するつもりなら言っておいてくれよ、迷惑だから」

リスク:

プライベートな生活や選択に関して干渉する発言は、モラハラとして受け取られる可能性があります。特に、結婚や妊娠などの個人の人生に関わる重要な選択に対してネガティブなコメントをしたり、プレッシャーをかけたりすることは、性差別や個人の尊厳を侵害する行為として訴訟リスクがあります。

  1. 不公平な待遇や差別的発言

言いがちなフレーズ:

•   「あの人は使えないから、仕事を割り振らなくていい」
•   「女性だからそんな仕事できないだろ」
•   「若いからどうせすぐ辞めるんだろ」
•   「年取ったスタッフはもう役に立たない」

リスク:

スタッフの年齢や性別、経験年数に基づいて不公平な扱いをしたり、差別的な発言をすることは、明確なハラスメントに該当します。性別や年齢を理由に役割を決めつけたり、仕事の機会を奪ったりすることは、労働基準法や均等法に違反する可能性があり、訴訟リスクが高まります。

  1. 体型や外見に関する不適切なコメント

言いがちなフレーズ:

•   「太り過ぎてお客さんが引いてるぞ」
•   「もっと見た目に気を使え」
•   「その髪型じゃ美容師失格だよ」

リスク:

体型や外見に関する批判的なコメントは、スタッフに精神的なダメージを与えることがあり、モラハラとみなされる可能性があります。美容師として外見に一定の基準が求められる職業であっても、外見に対する不適切な発言は、人間の尊厳を傷つけるものと見なされ、訴訟リスクが生じます。

  1. 仕事の失敗に対して過度に感情的な反応をする

言いがちなフレーズ:

•   「どうしてこんな簡単なこともできないんだ?」
•   「君のせいで全部台無しだ!」
•   「次また同じ失敗をしたら、すぐにクビにする」

リスク

仕事に対する指導や叱責は必要ですが、過度に感情的な反応や、一度のミスに対して厳しすぎる罰を与えることは、パワハラとして見なされるリスクがあります。脅迫的な発言や過度な叱責は、スタッフに精神的苦痛を与え、これが長期化すれば訴訟リスクが高まります。

  1. 身体的な接触や威圧的な態度

言いがちな状況:

•   スタッフの肩を強く叩いたり、腕を引っ張ったりする。
•   話している際に相手を威圧するために、机を叩いたり、物を投げたりする。
•   怒っている際に、スタッフの近くで立ちふさがり、逃げ道を作らない。

リスク:

身体的な接触や威圧的な態度は、パワハラとして訴えられるリスクがあります。直接的な暴力でなくても、威圧的な行為や接触はスタッフに心理的なプレッシャーを与える行為とされ、法的に問題視される可能性があります。

まとめ

サロンオーナーやスタイリストは、日々の業務においてスタッフを指導することが求められますが、その指導方法には注意が必要です。人格否定、過度な叱責、労働時間の強制、プライベートへの干渉、差別的な発言や態度は、すべてパワハラやモラハラとみなされるリスクがあります。

スタッフのモチベーションを高め、健全な職場環境を維持するためには、公正で丁寧な指導が求められます。特に近年では、ハラスメントに対する法的な取り締まりが厳しくなっており、スタッフからの訴えに対して企業やオーナー個人が法的責任を問われる可能性が高まっています。サロン経営においては、これらのリスクを避けるため、適切な言葉選びと態度を心がけることが重要です。